一般論として、遺産に不動産が含まれる場合には、その不動産をだれが取得するのか、売却するのか否か等について相続人間で意見が一致しないケースが多く見受けられます。特に、遺産である不動産に相続人の一人が住んでいるような場合には、生活の本拠地であったわけですから、売却に難色を示すことも心情としてはとても理解できるところです。
本解決事例では、遺産に占める土地建物の割合が大きかったところ(ほとんど唯一の遺産は不動産という状態でした)、兄弟の一人が被相続人名義の土地建物に住んでいる状況でした。
その遺産たる不動産に住んでいた相続人の方は、自分が土地建物を譲り受ける内容の遺産分割協議書を作成し、これに署名押印するように他の相続人に対して一方的に求めてきていました。しかし、その内容が不公平だと感じられた相続人の方からご相談をいただきました。
代理人として、不動産に住まわれる相続人側と交渉をいたしましたが、感情のもつれもあり、協議での解決は難しいと見込まれたため、遺産分割調停を東京家庭裁判所に提起しました。調停手続きは裁判所を交えた協議となり、粘り強い話し合いの末に当該不動産を売却することに相続人間で合意に至りました。具体的な売却の方法は、不動産仲介業者を介した任意売却手続きで行われたため、比較的高額な値段で、不動産の売却が叶い、売却代金を相続人間で法定相続分にしたがって公平に分割を行うことで決着がつきました。
本事例では、ある相続人から一方的に提示された遺産分割協議書に署名押印してしまっていれば、遺産の大きな割合を占める不動産を特定の相続人が独り占めする不公平な事態になってしまうところでしたが、弁護士にご相談いただいたことで、公平に分割することができました。
また、仮に不動産を任意売却できなかったとすれば、不動産は相続人間で共有になるか又は競売等を検討せざるを得ない状況でした。しかし、もし共有になったとしても相続人間の争いの火種は残りますし、もし競売になれば任意売却よりも売却金額が低くなることが通常です。したがって、本事例で不動産を任意売却できたことはすべての相続人にとって経済的には利益があるところであり、それぞれの相続人に代理人弁護士が就いて協議を重ねる中で、当事者の方の感情的なもつれを乗り越えて、合理的な解決に至ることができました。
弊所では、不公平な遺産分割案を一方的に提示された相続人の方が、公平な遺産分割を受けることができるように法的な支援を行っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。
野俣智裕