民事信託(家族信託)は公正証書ですべき!メリットや流れを解説

信託

「民事信託(家族信託)は公正証書を作らないといけないの?」と疑問をお持ちでしょうか。
法律上は、民事信託契約を結ぶ際に公正証書にする義務はありません。
しかし、トラブル予防のために公正証書は有効です。金融機関との関係でも、公正証書の作成が要求されます。
民事信託をうまく活用するためには、公正証書化が欠かせません。
この記事では、
●民事信託と公正証書に関する基礎知識
●民事信託を公正証書にするメリット
●民事信託を公正証書でする流れ
などについて解説しています。
最後まで読めば、民事信託を公正証書ですべき理由や作成までの流れがわかります。ぜひ参考にしてください。

民事信託(家族信託)と公正証書に関する基礎知識


そもそも、民事信託や公正証書はどういった制度なのでしょうか?
まずは、民事信託と公正証書に関する基礎知識をご説明します。

民事信託とは?

民事信託とは、財産を引き継ぐために、信頼できる人に財産の管理・処分を任せる仕組みです。家族に任せるケースが多いため「家族信託」とも呼ばれます。
民事信託においては、以下の3つの当事者が登場します。
●委託者:財産を他人に預ける人
●受託者:財産を預かって管理する人
●受益者:財産から生じる利益を受ける人
単純化すると、「委託者」の財産を「受託者」が引き受け、「受益者」のために財産を管理・処分する仕組みです。
設定時に贈与税が課税されるのを防ぐために、最初は「委託者=受益者」となっている場合が多いです。
たとえば認知症対策として、高齢の親が「委託者兼受益者」、子が「受託者」になって、子が親のために財産管理を行います。
委託者が死亡したときの権利者も定められるため、遺言の代わりに財産の引き継ぎにも利用できます。

参考記事:民事信託とは?活用法やメリット・デメリットを弁護士が解説

公正証書とは?

公正証書とは、個人や法人の依頼を受けて公証人が作成する公文書です。公証人は元裁判官など法律の専門家であり、作成された公正証書は一般的に信用性が高い文書とされます。
公正証書は様々な場面で利用されています。代表的な例は「公正証書遺言」です。遺言を公正証書にすると、希望に沿った内容にできるうえ、形式的にも問題がない遺言書を作成できます。
遺言のほかに、当事者で決めた契約内容を公正証書にすることも可能です。民事信託契約を公正証書にするケースもよくあります。

民事信託(家族信託)を公正証書にするメリット


民事信託の大半は契約により設定されますが、民事信託契約は公正証書でするべきです。
法律上は、民事信託契約を公正証書にすることは義務づけられていません。当事者間で合意して私的に契約書を作成したときでも有効です。理論上は、口約束でも契約できます。
しかし、現実には多くの場合で公正証書が作成されています。民事信託契約を公正証書ですることには、以下のメリットがあるためです。

トラブルを避けられる

公正証書にすればトラブルが予防でき、発生したとしても対処しやすくなります。
たとえば、公正証書になっていると、私的な契約書と比べて受託者に対して心理的なプレッシャーがかかり、契約が守られやすくなるでしょう。もし違反したとしても、公正証書が強力な証拠になるため、関係者が受託者の責任を追及しやすくなります。
認知症など、委託者の判断能力が問題となるケースもあります。公正証書にする際には公証人が法的判断能力を確認しているため、後から無効とされるリスクは低いです。
公正証書にしていれば内容も簡単に証明できるため、偽造や変造を心配する必要はありません。
トラブル防止や事後的対処の観点から見ると、民事信託を公正証書にするメリットは大きいです。

原本を保管してもらえる


公正証書にすると、公証役場で原本が保管される点もメリットです。
民事信託は何代にもわたって続く場合もあり、作成時に受けとった正本、謄本を紛失する可能性もゼロではありません。当事者がなくしてしまっても、公正証書の原本は公証役場に保管されているため、再発行により内容を確認できます。
公正証書にしておけば、時間が経っても内容不明になる心配はありません。

信託口口座を作成できる

実務上は「信託口口座」を作成できる点が大きなメリットになります。
信託口口座とは、信託財産になっている金銭を受託者が管理するための専用の肩書付口座です。名義は「委託者●●受託者●●信託口」等の形式になっていて、受託者自身の財産とは明確に区別できるようになっています。信託口口座であれば、受託者の債権者に差し押さえられたり、受託者が先に死亡して凍結されたりするリスクを避けられます。
信託口口座の開設は、民事信託の必須条件ではありません。とはいえ、信託財産と受託者の財産を明確に分けるために、信託口口座を開設するのが望ましいです。
信託口口座を金融機関で開設する際には、多くの場合で信託契約が公正証書になっていることが条件になります。信託口口座を開設できない事態を防ぐために、可能ならば私文書ではなく公正証書で民事信託契約をするべきです。

民事信託(家族信託)を公正証書にするときの注意点


公正証書には多くのメリットがあります。もっとも、以下の点には注意してください。

やりとりに時間や手間を要する

公正証書にするには、契約内容を決めた後に公証人との文言の調整などが必要です。作成当日も出向かなければなりません。
結果として、契約したいと考えたときから実際に公正証書が完成するまでに時間や手間を要してしまいます。私的な契約書では内容さえ決まればすぐに作成が可能であるのと比べると、少し面倒です。
弁護士などの専門家に依頼すれば、契約内容だけでなく公証役場との調整も任せられます。

作成費用がかかる

公正証書を作成するには手数料がかかります。
具体的な金額は、目的となる財産の価額によって以下の通りです(公証人手数料令9条別表)。

目的の価額手数料
100万円以下5,000円
100万円を超え200万円以下7,000円
200万円を超え500万円以下11,000円
500万円を超え1,000万円以下17,000円
1,000万円を超え3,000万円以下23,000円
3,000万円を超え5,000万円以下29,000円
5,000万円を超え1億円以下43,000円
1億円を超え3億円以下43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円
3億円を超え10億円以下95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円
10億円を超える249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円

信託する財産の価値が高ければ高いほど、費用がかさんでしまいます。
とはいえ、手数料を支払いさえすれば、公正証書のメリットを享受できます。

民事信託(家族信託)を公正証書でする流れ


民事信託を公正証書でする場合には、以下の流れで進めてください。

専門家に相談する

まずは、弁護士などの専門家に相談しましょう。
民事信託は仕組みが複雑であり、ニーズによって契約書の内容が大きく変わります。制度が比較的新しいため、公証人であっても詳しくない可能性があります。ひな形を見ただけで、専門家に相談せずに適切な内容の契約書を作るのは困難です。
そもそも、民事信託では希望が実現できないケースもあります。遺言など他の制度の利用も考えられるため、ご自身に適したプランを知るために専門家への相談が不可欠です。

契約書の内容を決める

依頼を受けた弁護士は、契約書案を作成します。
契約書の内容は、状況や希望に応じて千差万別です。専門家であっても、十分な法的知識・経験がないと適切な契約書を作成できません。実績等を考慮して、民事信託に精通した弁護士に依頼するのが重要になります。

金融機関・公証役場と調整する

契約書案が固まったら、金融機関や公証役場との調整に入ります。
信託口口座を開設する金融機関によって、求められる条項が異なるケースがあります。公正証書を作成してから指摘されると二度手間になってしまうため、先に金融機関に確認が必要です。
金融機関と話がついたら、公証役場の公証人とも調整して、内容や作成日などを決定します。
調整をご自身で行うとしたら大変ですが、弁護士に依頼すれば安心して任せられます。

公正証書を作成する

作成日に公証役場に出向き、公正証書の内容を確認します。間違いがなければ、完成した公正証書を受け取ってください。前述した手数料がかかります。
公証役場には弁護士も同行するので、「手続きがうまくいくか不安」などと心配する必要はありません。

民事信託(家族信託)を公正証書にする際は弁護士にご相談を


ここまで、民事信託を公正証書にするメリット・注意点や、作成までの流れなどについて解説してきました。
法律上は、民事信託契約を公正証書にする義務はありません。しかし、トラブル防止の観点や金融機関の要求を踏まえると、民事信託は公正証書でする必要があります。自力でやると時間や手間はかかってしまいますが、弁護士に依頼して任せれば安心です。

民事信託を公正証書にする際には、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
民事信託は比較的新しい制度で仕組みも複雑であるため、弁護士であっても詳しいとは限りません。当事務所は民事信託に力を入れており、取り扱い経験が豊富です。
状況やご希望を伺ったうえで、契約書の作成、金融機関や公証役場との調整などを進めます。民事信託だけで実現が困難な場合には、遺言や任意後見といった他の制度の活用もご提案いたします。
「民事信託を公正証書にしてほしい」「そもそも民事信託で希望を実現できるか知りたい」といった方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

この記事を書いた弁護士

野俣智裕
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

  • 野俣 智裕

  • ■東京弁護士会 ■日弁連信託センター
    ■東京弁護士会業務改革委員会信託PT
    ■東京弁護士会信託法部

  • 信託契約書の作成、遺産分割請求事件等の相続関連事件を数多く取り扱うとともに、顧問弁護士として複数の金融機関に持ち込まれる契約書等のチェック業務にも従事しております。

  • 東京弁護士会や東京税理士会等で専門士業向けに信託に関する講演の講師を務めた経験も有し、信託や相続に関する事件に深く精通しております。

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