信託で登録免許税はかかる?課税される場面と金額を解説

信託

不動産を民事信託(家族信託)の対象にしたときには、登記が必要です。登記の際には、登録免許税を支払わなければなりません。

信託でかかる登録免許税は、売買をしたときに比べると低額ですが、不動産の価値が高いときには無視できない金額になります。信託を利用する際にかかる費用として、あらかじめ知っておく必要があるでしょう。

この記事では、

  • ●信託と登録免許税の基礎知識
  • ●信託で登録免許税が課税される場面と金額
  • ●信託で登録免許税の他にかかる費用

などについて解説しています。

信託の利用を検討している方に知っておいて欲しい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

信託と登録免許税の基礎知識

まずは、不動産を民事信託する際には登記が必要であることや、登録免許税とは何かについて解説します。

信託では登記が必要

信託財産の中に不動産が含まれる場合には、登記が必要です。信託の登記をしなければ、その不動産が信託財産に属することを第三者に対抗できず(信託法14条)、受託者には信託の登記をする義務があります(信託法34条1項1号)。この義務は、信託契約で免除することができません(信託法34条2項)。

登記手続きの全体像、必要書類、登記が必要になる場面については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:信託で登記は必要?記載内容や必要な場面、注意点を解説

登録免許税は登記する際にかかる税金

不動産を信託するために登記する際には、登録免許税を支払わなければなりません。

登録免許税とは、法務局で登記手続きをする際にかかる税金です。税額は、登記の種類や不動産の評価額によって変わります。信託の場合には売買による所有権移転と比べて割安になっているものの、価値の高い不動産を信託財産にするときにはある程度高額になり得ます。

信託で登録免許税が課税される場面と金額

信託で登録免許税が課される場面と金額をまとめると、以下の表の通りです。

場面 登記の種類 登録免許税の金額
信託設定時 所有権移転登記 非課税
信託登記 ・土地:固定資産税評価額の0.3%
・建物:固定資産税評価額の0.4%
受益者変更 変更登記 不動産1個につき1,000円
受託者変更 所有権移転登記 非課税
契約内容変更 変更登記 不動産1個につき1,000円
不動産売却 所有権移転登記 ・土地:固定資産税評価額の1.5%
・建物:固定資産税評価額の2%
信託登記抹消登記 不動産1個につき1,000円
信託終了時 所有権移転登記 ・委託者兼受益者本人に戻る場合:非課税
・委託者の相続人が取得する場合:固定資産税評価額の0.4%
・上記以外:固定資産税評価額の2%
信託登記抹消登記 不動産1個につき1,000円

各場面について、順に詳しく解説します。

信託設定時

信託を設定する際には、所有権移転登記と信託登記を行います。

所有権移転登記

信託では、形式的にではありますが、対象財産の所有権が委託者から受託者へと移転します。所有権が移転した事実が誰から見ても明らかになるように、登記簿に記載しなければなりません。

信託で所有権が移転する場合、所有権移転登記については登録免許税が非課税となります(登録免許税法7条1項1号)。信託財産として管理するために形式的に受託者へと所有権を移しますが、実質的な権利は移転していないためです。売買で所有権を移転するケースとは異なります。

したがって、信託を設定するとき、所有権移転登記については登録免許税がかかりません。

信託登記

不動産を信託する際には、所有権移転登記の他に、信託登記も必要です。信託登記をすれば、不動産が信託財産であると第三者に示せます。委託者・受託者・受益者に関する情報など、信託のおおまかな内容が「信託目録」に記載されます。

信託登記は登録免許税の課税対象です。課税額は、固定資産税評価額を基準に決まります。

土地については、固定資産税評価額の0.3%です(租税特別措置法72条1項2号)。これは租税特別措置法による軽減税率で、令和11年(2029年)3月31日までに受ける登記に適用されます。建物については、固定資産税評価額の0.4%になります(登録免許税法9条、別表第一1号(十)イ)。

たとえば、固定資産税評価額1,000万円の土地を信託したときには、信託登記の登録免許税は3万円です。

受益者が変わるとき

受益者が変わった際には、信託目録の記載内容を変更しなければなりません。変更登記を行います。

変更登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法9条、別表第一1号(十四))。通常の相続であれば固定資産税評価額の0.4%の登録免許税が課されるのと比べると低額ですむため、節税のために利用される場合もあります。

受託者が変わるとき

受託者が死亡や辞任によって変更したときにも、登記が必要です。所有権者が変わるため、所有権移転登記を行います。

新たな受託者についても形式的に所有権者になるだけであり、実質的な権利者は変わっていません。したがって、登録免許税は非課税です(登録免許税法7条1項3号)。

契約内容を変更するとき

当事者以外の契約内容を変更するときにも、登記の記載を変更する必要があります。

変更登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です。

不動産を売却するとき

資金を得る目的などで、信託された不動産を売却するケースもあります。売却する際には、所有権移転登記と、信託抹消登記が必要です。それぞれ登録免許税が課税されます。

所有権移転登記

売買により所有権が受託者から購入者に移転するため、所有権移転登記を行います。

登録免許税は、建物については固定資産税評価額の2%です(登録免許税法9条、別表第一1号(二)ハ)。土地については、租税特別措置法による軽減税率が適用され、固定資産税評価額の1.5%になります(租税特別措置法72条1項1号)。この軽減は、令和11年(2029年)3月31日までに受ける登記に適用されます。いずれにしても、設定時よりは高額です。

信託登記抹消登記

売却によって信託の対象から外れるため、信託登記の抹消登記が必要になります。

登録免許税は不動産1個につき1,000円です(登録免許税法9条、別表第一1号(十五))。ただし、同一の申請書で20個を超える不動産の登記の抹消を受ける場合は、申請件数1件につき2万円となります。

終了時

信託終了時には、受託者から帰属権利者への所有権移転登記と、信託登記の抹消登記が必要です。

所有権移転登記

信託終了に伴って帰属権利者に権利が移転するため、所有権移転登記を行います。

信託終了時の所有権移転登記の登録免許税は、誰に信託財産が帰属するかによって、非課税・0.4%・2%に分かれます。

まず、自益信託が終了して委託者兼受益者本人に信託財産が戻る場合は、非課税です(登録免許税法7条1項2号)。実質的な権利者が変わっていないため、信託設定時の所有権移転登記と同じ扱いになります。

次に、以下の3つの要件をすべて満たす場合には、相続による所有権移転登記とみなされ、登録免許税は固定資産税評価額の0.4%になります(登録免許税法7条2項同法9条、別表第一1号(二)イ)。

①信託財産を受託者から受益者に移す場合であること
②信託の効力が生じた時から引き続き、委託者のみが信託財産の元本の受益者であること
③その受益者が、信託の効力が生じた時における委託者の相続人であること

信託終了後に財産を受け取るのは「帰属権利者」であることが多いですが、帰属権利者は信託の清算中は受益者とみなされるため(信託法183条6項)、①の要件を満たすと解されています(名古屋国税局・東京国税局の文書回答事例)。

これらの要件を満たさない場合は、固定資産税評価額の2%です(登録免許税法9条、別表第一1号(二)ハ)。たとえば、受益者連続型の信託で、委託者以外の人が途中から元本の受益者になっていた場合には、②を満たしません。

特に②の要件は見落としやすい点です。委託者の死亡後も信託を続ける設計にする場合、委託者の地位を受益権とともに承継させる旨を契約書に定めておかないと、②を満たさず0.4%の適用を受けられないおそれがあります。無駄な登録免許税の支払いを避けるために、信託に詳しい専門家に契約書を作成してもらうようにしましょう。

信託登記抹消登記

信託が終了して対象ではなくなるため、信託登記の抹消登記も必要になります。

売却時と同様に、登録免許税は不動産1個につき1,000円です。

信託で登録免許税の他にかかる費用

民事信託では、登録免許税の他にも費用がかかります。

公正証書作成手数料

信託をする際には、大半のケースで契約書を作成します。信託契約書は公正証書にするのが一般的です。

公正証書とは、市民の依頼を受けて公証人が作成する文書です。法律の専門家である公証人のお墨付きを得ることで、トラブル予防や信託口口座の開設が可能になります。

公正証書を作成する際には手数料がかかります。金額は、目的となる財産の価額によって以下の通りです(公証人手数料令9条、別表)。なお、この手数料は令和7年10月1日に改定されています。

目的の価額 手数料
50万円以下 3,000円
50万円を超え100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 13,000円
500万円を超え1,000万円以下 20,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 26,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 33,000円
5,000万円を超え1億円以下 49,000円
1億円を超え3億円以下 49,000円+超過額5,000万円までごとに15,000円
3億円を超え10億円以下 109,000円+超過額5,000万円までごとに13,000円
10億円を超える 291,000円+超過額5,000万円までごとに9,000円

信託財産の価値が高ければ、ある程度の費用がかかります。とはいえ、トラブル予防のためには公正証書にするのが望ましいです。

民事信託を公正証書ですべきことについては、以下の記事で解説しています。
参考記事:民事信託(家族信託)は公正証書ですべき!メリットや流れを解説

専門家への報酬

民事信託は契約内容が複雑であるため、思い通りの内容にするためには専門家への依頼が必要になります。専門家に頼まずにひな形を使いまわそうとしても、何らかの問題が生じる可能性が高いです。

専門家に契約書の作成、公正証書化、信託登記などを依頼すれば、報酬が発生します。依頼する事務所や財産の内容によりますが、数十万円から100万円程度が目安です。

たしかにお金はかかりますが、間違いなく信託を始めるには専門家への依頼をおすすめします。信託は制度の歴史が浅く専門家であっても詳しくない場合があるため、取り扱い経験が豊富な専門家を探して依頼するようにしましょう。

民事信託(家族信託)の利用を検討している方は弁護士にご相談を

ここまで、信託でかかる登録免許税について解説してきました。

不動産を信託財産にするケースでは、登記の際に登録免許税を支払わなければなりません。後で慌てないために、事前に金額を把握しておくようにしましょう。

信託の利用を検討している方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。

当事務所は民事信託に力を入れており、豊富な経験を有しています。現在の状況をお聞きしたうえで、法的リスクを避けつつ希望を実現できる方法をオーダーメイドでご提案可能です。

想定される費用についても、丁寧に説明いたします。「登録免許税を含めて信託にかかる費用が心配」と不安をお持ちの方でも、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

この記事を書いた弁護士

野俣智裕
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

  • 野俣 智裕

  • ■東京弁護士会 ■日弁連信託センター
    ■東京弁護士会業務改革委員会信託PT
    ■東京弁護士会信託法部

  • 信託契約書の作成、遺産分割請求事件等の相続関連事件を数多く取り扱うとともに、顧問弁護士として複数の金融機関に持ち込まれる契約書等のチェック業務にも従事しております。

  • 東京弁護士会や東京税理士会等で専門士業向けに信託に関する講演の講師を務めた経験も有し、信託や相続に関する事件に深く精通しております。

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