委託者とは?なれる人や権利、死亡するとどうなるかを解説

信託

委託者とは、民事信託(家族信託)において財産を預ける人です。
基本的に誰でも委託者になれます。受益者や受託者と同じ人でも構いませんが、法的判断能力は不可欠なので認知症だと委託者になれません。
委託者は信託の当事者として、一定の権利を有しています。委託者が死亡した際にどうなるかはケースバイケースです。
この記事では、

などについて解説しています。
委託者は民事信託で必ず登場します。信託の利用を検討している方には知っておいて欲しい内容ですので、ぜひ最後までお読みください。

委託者とは信託で財産を預ける人


弁護士
野俣 智裕
委託者とはどんな人?

委託者とは、信託において財産を預ける人です。
信託では、委託者の財産を「信託財産」として、管理・処分を「受託者」に任せます。委託者が、信託財産を誰のためにどう使うかを定めます。
よくあるのは、高齢の親が委託者、子が受託者となって、金銭や不動産の管理・処分を任せるケースです。親が認知症になっても信託財産は凍結されず、子が事前の定めにしたがって管理を継続します。親の死後の財産承継についての指定も可能です。
民事信託は、委託者の希望を実現するための制度といえます。

委託者になるのは誰?


弁護士
野俣 智裕
委託者には基本的に誰でもなれる!

委託者は、信託で自らの財産を受託者に預ける人です。
では、誰が委託者になれるのでしょうか?

基本的に誰でもなれる

委託者になるために特に資格は要求されていません。基本的には誰でも委託者になれます。
もっとも、信託をするためには法的な判断能力が必要です。認知症で法的判断能力がないと、信託を設定するための契約や遺言ができません。
法的判断能力の有無は行為ごとに判定されますが、民事信託は仕組みが複雑です。信託が法律上持つ意味やもたらされる結果を理解するのは、比較的難しいといえます。高齢で認知症の症状が見られる場合には、委託者になるのは困難です。
認知症になっているかが微妙なケースでは、後から「認知症だったから信託は無効だ」などと主張され争いになるおそれがあります。信託を理解できる状態であった事実をトラブルになった際に証明するために、医師の見解や検査結果、介護記録などを残しておきましょう。

他に委託者になれるかが問題になり得るのは未成年者です。18歳未満の未成年者でも委託者になれますが、親権者(法定代理人)の同意が要求されます。また、遺言による信託は、遺言が可能になる15歳以上でないとできません(民法961条)。

基本的に誰でも委託者になれますが、 特に認知症の疑いがある高齢者については注意してください。すでに認知症で法的判断能力が失われている場合は、財産を活用するためには法定後見制度を利用するほかありません。認知症になる前に、早めに信託を設定するようにしましょう。
参考記事:認知症になると口座凍結される!民事信託や任意後見による対策を解説

委託者と受益者が同一人物になる自益信託が多い

民事信託には、委託者と受託者の他に「受益者」も登場します。受益者とは、信託財産から生じる利益を受ける人です。たとえば、賃貸用不動産から得た賃料が受益者にもたらされます。
委託者は受益者を兼ねることも可能です。委託者と受益者が同一人物である信託を「自益信託」と呼びます。
民事信託においては自益信託が一般的です。「委託者=受益者」とすれば、設定時に贈与税の課税を回避できるメリットがあります。
委託者が受益者を兼ねるのは問題なく、むしろ民事信託の開始時においては通常の形態です。
自益信託について詳しくは、以下の記事を参照してください。
参考記事:自益信託とは?他益信託との違いやメリット・活用例を解説

委託者と受託者が同一人物の自己信託も可能

委託者は受託者を兼ねることも可能です。委託者と受託者が同一人物である信託を「自己信託(信託宣言)」と呼びます。
自己信託は、受託者が見つからなくても利用でき、自分で財産を管理できる点がメリットです。たとえ「委託者兼受託者」が破産しても、信託財産は守られます。受益者のために財産を確保しておきたいケースなどで活用されます。
ただし、財産隠しや執行逃れに悪用されるおそれがあるため、公正証書の作成など法律上の要件を満たさなければ自己信託は利用できません。
自己信託について詳しくは、以下の記事を参照してください。
参考記事:自己信託(信託宣言)とは?メリットや活用例を弁護士が解説

委託者が複数人になるケースもある

委託者が複数になること自体は禁じられていません。通常はひとりですが、複数人になるケースもあります。
たとえば、共有状態にある不動産を信託するケースです。共有持分を有する権利者全員が委託者になれば、委託者が複数になります。
共有状態にある不動産は、共有者の同意がないと管理・処分ができない点が問題です。複数の委託者にわかれている権利をひとりの受託者にまとめれば、管理・処分の際に個別に同意を取りつける必要がなくなります。
共有不動産の信託について詳しくは、以下の記事を参照してください。
参考記事:共有不動産を信託するメリット・注意点や事例を弁護士が解説

委託者の権利


弁護士
野俣 智裕
委託者の権利をご説明します。

委託者は様々な権利を有しています。 大まかに、委託者としての権利と、信託利害関係人としての権利に分類されます。
信託法に定められている、委託者としての権利の例は以下の通りです。
●信託事務処理状況の報告請求権(36条
●受益者との合意による受託者の解任権(58条1項
●裁判所に対する受託者の解任申立権(58条4項
●受益者との合意による新受託者の選任権(62条1項
●信託監督人の辞任に対する同意権(134条2項57条1項
●受益者との合意による信託監督人の解任権(134条2項58条1項
●信託の変更の同意権(149条1項
●受益者との合意による信託終了権(164条1項
●利害関係人としての権利の例は以下の通りです。
●財産状況の開示資料の閲覧請求権(38条6項
●新受託者に対する就任諾否の催告権(62条2項
●裁判所に対する新受託者の選任申立権(62条4項
他にも、信託契約等によって一定の権利を委託者に与えられます(145条2項)。反対に、上記の権利であっても、全部または一部を有しないと定めることも可能です(145条1項)。
民事信託において、設定後は、財産から利益を受ける「受益者」の権利が問題になる場合が多いです。ほとんどの民事信託において、設定時は「委託者=受益者」であるため、委託者としての権利はあまり問題になりません。
ただし、元から委託者と受益者が異なる「他益信託」であるケースや、委託者の死亡により権利が引き継がれたケースでは問題になり得ます。

委託者が死亡するとどうなる?


弁護士
野俣 智裕
委託者が死亡した際にはどうなる?

では、委託者が死亡した際には、委託者の地位や権利はどうなるのでしょうか?

遺言による信託の場合

遺言による信託の場合には、原則として委託者の地位は相続により承継されません(信託法147条本文)。
遺言によって信託を設定した場合には法定相続分と異なる定めをしているはずであり、委託者の相続人と受益者の利害が一般的に一致しないためです。また、続いて相続が発生すると関係者が増えてしまう点も、委託者の地位が承継されない理由として挙げられます。
もっとも、別の定めがある場合には委託者の地位が相続人に引き継がれます(信託法147条ただし書)。

信託契約や自己信託の場合

信託契約や自己信託により信託を設定した場合には、原則として委託者の地位は相続により承継されます(信託法147条本文反対解釈)。 信託の大半は信託契約であるため、委託者の地位は相続人に引き継がれるのが基本です。
もっとも、契約に別の定めがあれば、委託者の地位は引き継がれません。委託者が死亡した際に相続人が信託に関わるのを防ぐために、受益権を取得する人に委託者の地位が引き継がれるように定める場合が多いです。委託者の地位を受益権の取得者に引き継がせると、登録免許税の軽減措置の適用を受けられるメリットもあります。
思わぬ事態が生じないようにするために、契約書の条項には注意しなければなりません。

信託を検討している方は弁護士にご相談を


弁護士
野俣 智裕
お気軽にご相談ください!

ここまで、委託者の意義、なれる人、有する権利、死亡時の地位の承継などについて解説してきました。
委託者は、信託において財産を預ける人です。認知症などのケースを除き、誰でも委託者になれます。様々な権利を有していますが、死亡時に委託者の地位をどうするかには注意しましょう。

民事信託の利用を考えている方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。
民事信託は仕組みが複雑で制度の歴史が浅いため、専門家であっても詳しくない場合が少なくありません。当事務所は民事信託に力を入れており、豊富な経験を有しています。現在の状況やご希望をお聞きしたうえで、実現できる方法をオーダーメイドでご提案いたします。
「民事信託の委託者になりたい」「委託者が死亡した際に信託がどうなるのかを知りたい」といった方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

この記事を書いた弁護士

野俣智裕
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

  • 野俣 智裕

  • ■東京弁護士会 ■日弁連信託センター
    ■東京弁護士会業務改革委員会信託PT
    ■東京弁護士会信託法部

  • 信託契約書の作成、遺産分割請求事件等の相続関連事件を数多く取り扱うとともに、顧問弁護士として複数の金融機関に持ち込まれる契約書等のチェック業務にも従事しております。

  • 東京弁護士会や東京税理士会等で専門士業向けに信託に関する講演の講師を務めた経験も有し、信託や相続に関する事件に深く精通しております。

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