相続税の基礎控除と遺産分割|配偶者の取り分で税負担はどう変わる?

相続

「父が亡くなったが、遺産の額からすると相続税がかかるのかどうか分からない」
「母に多く相続してもらうか、子どもで分けるかで家族の意見が分かれている」
「兄だけ生前に贈与を受けていたが、相続税と遺産分割で扱いが違うと聞いて混乱している」
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、遺産の額(課税価格の合計額)がこの額以下であれば相続税はかからず、原則として申告も要りません。基礎控除を超える場合は、誰が何を取得するかで各人の負担や使える特例が変わるため、配偶者の取り分は二次相続や配偶者の生活、相続人の間の公平まで見て決めることが大切です。


弁護士
野俣 智裕
この記事では、
●相続税の基礎控除と法定相続人の数え方
●遺産の分け方で相続税の負担が変わる理由
●配偶者の税額軽減と二次相続を考えた取り分
●自宅の土地を誰が取得するか(小規模宅地等の特例)
●申告期限までに遺産分割がまとまらないときの対応
●生前贈与の相続税での扱いと特別受益・遺留分の違い
などについて解説しています。

目次

■ 相続税の基礎控除とは?まず「相続税がかかるか」を確認する

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、亡くなった方から相続や遺贈で財産を取得した全員の課税価格の合計額がこの額以下であれば、相続税はかかりません(相続税法15条1項)。

相続税法15条1項

相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

【基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」】

法定相続人が配偶者と子2人の3人であれば、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。現在の額は、2015年(平成27年)1月1日以後の相続から適用されています。
「課税価格の合計額」は、遺産の総額から非課税財産・葬式費用・債務を差し引き、一定の生前贈与を加えた額で、国税庁は「正味の遺産額」と呼んでいます。

【法定相続人の数え方で注意する点(養子・相続放棄)】

基礎控除の計算に使う「法定相続人の数」は、民法上の相続人の数を基本としながら、相続放棄をした人も数に含め、養子の数には上限を設けている点に特徴があります(相続税法15条2項)。
● 相続放棄をした人がいても、放棄がなかったものとした場合の相続人の数で数えます。
● 数に含める養子は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
● 特別養子や代襲相続人などは実子として扱われ、すべて数に含まれます。
参考記事:相続放棄について

【遺産が基礎控除以下なら原則として申告は不要】

課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告も納税も必要ありません(国税庁タックスアンサーNo.4205)。
ただし、基礎控除を超えるかどうかは小規模宅地等の特例を使う前の額で判定するため、特例で税額が0円になる場合でも申告が必要です。配偶者の税額軽減で0円になる場合も同様です(配偶者の税額軽減の章で説明します)。

【税額の計算は国税庁の情報と個別の試算で確認する】

基礎控除を超えた部分にかかる相続税は、法定相続分どおりに取得したと仮定して税率を掛ける独特の方法で計算するため、具体的な金額を知るには財産の評価を含めた個別の試算が必要です。
計算の流れは以下で確認でき、ご家族の場合の具体的な税額は税理士にご相談ください。
参考:国税庁 タックスアンサーNo.4152 相続税の計算
参考記事:相続税額の計算の流れ
ここから先は、遺産の分け方によって負担が変わる点を、相続を扱う弁護士の立場で解説します。

■ 遺産分割の方法で相続税の負担が変わるのはなぜか

相続税の総額は「法定相続分どおりに取得した」と仮定して計算されますが、各人はその総額を実際に取得した割合で負担し、特例も取得した人によって使えるかが決まるため、分け方しだいで各人の負担も家族全体の納税額も変わります。

【相続税の総額を「実際に取得した割合」で分けて負担する】

各人が納める相続税は、相続税の総額に、その人が実際に取得した財産(課税価格)の割合を掛けて計算します(相続税法17条)。
配偶者と子で分ける場合のイメージは次のとおりです(金額は事案ごとに異なります)。

分け方の例 配偶者の取得割合 子の取得割合 負担のイメージ
配偶者が多く取得する 多い 少ない 総額の多くを配偶者が負担する割合になるが、税額軽減で配偶者の納税額は大きく減る
子が多く取得する 少ない 多い 総額の多くを子が負担し、子には税額軽減がないため、家族全体の納税額は増えやすい

総額が同じでも、配偶者と子のどちらが多く取得するかで、誰がいくら納めるかと特例で減る額が変わります。

【配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例は取得した人で決まる】

配偶者の税額軽減は配偶者が取得した財産にだけ、小規模宅地等の特例は要件を満たす親族が取得した自宅の土地などにだけ使えるため、誰が何を取得するかで特例が使える範囲が変わります。
未成年者控除や障害者控除も、その相続人が財産を取得して初めて使える税額控除です。

【遺言がある場合と遺産分割協議で決める場合の違い】

遺言で取得する人が決まっていれば原則として遺言に従い、遺言がなければ相続人全員の遺産分割協議で誰が何を取得するかを決めます。
相続人全員(遺言で財産を受け取る相続人以外の人がいればその人も)が合意すれば、遺言と異なる分け方をすることもありますが、遺言執行者がいる場合などは扱いが変わるため、事前に弁護士に確認しましょう。

■ 配偶者が多く相続すると相続税はどうなるか(配偶者の税額軽減)

配偶者が遺産分割や遺贈で実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円と配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までであれば、配偶者に相続税はかかりません(相続税法19条の2、国税庁タックスアンサーNo.4158)。
「相続税の配偶者控除」と検索されることが多い制度ですが、相続税での正式な名前は「配偶者の税額軽減」です。

【配偶者の税額軽減の仕組み(1億6,000万円か法定相続分まで)】

配偶者の税額軽減の上限は「1億6,000万円」と「法定相続分相当額」の多いほうで、配偶者の法定相続分は、子がいる場合は2分の1、子がおらず親が相続人の場合は3分の2、兄弟姉妹が相続人の場合は4分の3です。
たとえば正味の遺産額が1億6,000万円以下なら、配偶者がすべてを取得しても配偶者自身に相続税はかからないのが目安です。軽減されるのは配偶者の税額だけで、子が取得した分には相続税がかかります。

【税額軽減を受けるには遺産分割と申告が必要】

配偶者の税額軽減は配偶者が実際に取得した財産をもとに計算するため、申告期限までに分割されていない財産は原則として対象にならず、軽減の結果として納める税額が0円になる場合でも申告書の提出が必要です(相続税法19条の2第2項・第3項)。
申告書には、遺産分割協議書の写しなど配偶者が取得した財産が分かる書類を添えます。

【配偶者の住まいと生活資金をどう確保するか】

配偶者が自宅に住み続けながら生活資金も確保したい場合は、自宅の所有権を子が取得して配偶者が配偶者居住権を取得する分け方や、婚姻期間20年以上の夫婦の間でされた自宅の贈与・遺贈についての持戻し免除の推定(民法903条4項)を検討できます。配偶者がすべてを相続すれば有利とは限らない点は、次の章で説明します。
参考記事:相続における配偶者居住権制度
参考記事:配偶者居住権の設定方法|要件・登記と設定後の譲渡・賃貸・解除のルール
参考記事:特別受益と配偶者の持戻し免除の推定規定

■ 二次相続まで考えた配偶者の取り分の決め方

一次相続(先に亡くなった方の相続)で配偶者が多く取得すると、その配偶者が亡くなったときの二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、法定相続人も1人減るため、子の相続税の負担が重くなる場合があります。

【二次相続では配偶者の税額軽減が使えず、相続人も減る】

二次相続では、残された配偶者の財産に一次相続で取得した財産が上乗せされたうえで、配偶者の税額軽減を使えない子だけが相続人になります。
たとえば一次相続の相続人が配偶者と子2人なら基礎控除額は4,800万円ですが、二次相続の相続人が子2人だけになると、基礎控除額は3,000万円+600万円×2人=4,200万円に下がります。

【配偶者が全部相続した場合に起こりやすいこと】

配偶者がすべてを相続する分け方は、一次相続の税負担を抑えやすい反面、次のような問題が起こることがあります。
● 二次相続で子が納める相続税が増えることがあります。
● 配偶者が認知症になると、遺言などの生前の対策ができなくなることがあります。
● 再婚家庭では、前の配偶者との子は養子縁組をしない限り後の配偶者の相続人にならず、二次相続で財産が渡らないため争いになりやすくなります。
● 遺言で配偶者にすべてを相続させた場合、子から遺留分を主張されることがあります。
参考記事:相続人に認知症の人がいたら?遺産分割のポイントを弁護士が解説
「配偶者の税額軽減を使わないほうがいい場合は」という疑問もよく聞かれます。一次と二次の合計では、配偶者の取り分を控えめにしたほうが税が少なくなる場合もありますが、配偶者の生活より税を優先すべきとは限らず、一律に「使わないほうが得」とはいえません。

【子との話し合いで決めておきたいこと(生活資金・自宅・次の相続)】

配偶者の取り分は税だけで決めず、配偶者のこれからの生活と、相続人の間の公平もあわせて話し合うことが大切です。
● 配偶者がこの先の生活や介護に必要とする預貯金の額
● 自宅を誰が取得し、配偶者が住み続けられるようにするか(配偶者居住権を使うか)
● 配偶者が取得した財産を、二次相続で誰にどう引き継ぐか(配偶者に遺言を書いてもらうか)
● 子の一人が多く取得する場合に、ほかの子との公平をどう保つか
生前の備えとして、遺言のほか民事信託(家族信託)で承継先を決めておく方法もあります。
参考記事:二次相続に民事信託(家族信託)で備える方法を弁護士が解説

【税額の比較は個別の試算で行う】

一次相続と二次相続の合計税額は、配偶者自身の財産の額や年齢、財産の種類、今後の生活費によって変わるため、分け方ごとの比較には個別の試算が必要です。
分け方ごとの具体的な税額の比較は、税理士にご相談ください。試算の結果は分け方を選ぶ材料の一つで、配偶者の生活と相続人の公平をどう折り合わせるかは家族の話し合いで決めます。
配偶者とお子さまで取り分の考えが分かれたら、話し合いを始める前に当事務所にご相談ください。お電話(0120-061-057、平日9時~18時)またはメールフォームから受け付けています。

■ 自宅の土地は誰が相続するか:小規模宅地等の特例と分け方

亡くなった方が住んでいた自宅の土地は、配偶者や同居していた親族など要件を満たす人が取得した場合に限り、330㎡までの部分の評価額を80%減らせる小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の対象になります(租税特別措置法69条の4、国税庁タックスアンサーNo.4124)。

【特例を使えるのは配偶者や同居していた親族などに限られる】

特定居住用宅地等として特例を使えるかは、自宅の土地を取得した人が誰か、その後も住み続けて持ち続けるかで決まります。
● 配偶者が取得した場合は、住み続けるかどうかなどの要件はありません。
● 亡くなった方と同居していた親族が取得した場合は、申告期限まで住み続け、土地を持ち続けることが必要です。
● 配偶者も同居していた相続人もいない場合は、一定の期間に持ち家に住んでいないなどの要件を満たす別居の親族が取得したときにも使えます。
特例を使うには、原則として申告期限までに分割されている必要があります。ご自宅が要件を満たすかどうかの具体的な判断は、税理士にご相談ください。

【共有で相続する場合・売却を考えている場合の注意】

特例は要件を満たす取得者の持分に応じた部分にしか使えないため、自宅を共有で相続すると要件を満たさない共有者の持分には使えず、同居していた親族が申告期限までに売却した場合も使えなくなります。
共有にすると、将来の売却に共有者全員の同意が必要になるなど、税以外の問題も生じます。
参考記事:共有名義の不動産の相続|片方が亡くなったら持分はどう分ける?

【自宅の取得者をめぐって話し合いがまとまらないとき】

自宅を特例が使える相続人に取得させたいが、それでは他の相続人との取り分に差が出る、という場合は、自宅を取得する人が他の相続人に代償金を支払う代償分割という分け方があります。
売却して代金を分ける換価分割もありますが、申告期限までの売却は特例に影響することがあります。
参考記事:遺産分割手続の種類

■ 申告期限の10か月までに遺産分割がまとまらないとき

相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10か月以内)は、遺産分割がまとまらなくても延びないため、未分割の財産は法定相続分で取得したものとして期限内に申告・納税する必要があります(相続税法27条1項・55条)。
たとえば1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が申告期限です(国税庁タックスアンサーNo.4205)。

【未分割のまま法定相続分で申告・納税する】

遺産分割がまとまらないまま申告する場合、配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えないため、分割がまとまった後に比べて、いったん納める相続税が大きくなることがあります(国税庁タックスアンサーNo.4208)。
期限内に申告・納税しないと、加算税や延滞税がかかる場合があります。

【「申告期限後3年以内の分割見込書」を出しておく】

申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておき、申告期限から3年以内に分割がまとまれば、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を後から使えます。
3年以内に分割できないことについて、遺産をめぐる訴えが起こされているなどやむを得ない事情があるときは、税務署長の承認を受けることで、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割した場合にも特例を使えます。承認の申請にも期限があるため、早めに準備しましょう。

【分割が決まった後の更正の請求・修正申告】

分割がまとまった結果、当初の申告より税額が少なくなるときは、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をして払い過ぎた税金の還付を求め、多くなるときは修正申告をします(相続税法32条1項)。
分割がまとまる時期と税の手続きの期限は、あわせて管理することが大切です。

【話し合いが進まないときは遺産分割調停へ】

相続人の間で協議がまとまらないときや協議ができないときは、各相続人が家庭裁判所に遺産の分割を請求でき(民法907条2項)、まずは調停で話し合うのが一般的です。
● 連絡が取れない・協議に応じない相続人がいる場合は、調停を申し立てて手続きを進められます。
● 特別受益の主張が対立している場合は、贈与を示す資料を集めて主張を整理します。
参考記事:遺産分割協議に応じない相続人がいたら?リスクや対処法を解説
参考記事:遺産分割調停の期間と流れ|弁護士に依頼するメリットは?
なお、2023年4月1日施行の改正民法により、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、原則として特別受益や寄与分を主張できなくなりました(民法904条の3)。
税と民法の両方の期限から、分割は早めに進めましょう。

■ 生前贈与は相続税と遺産分割でどう扱われるか(7年加算・特別受益・遺留分)

生前贈与は、相続税では亡くなる前の一定期間(2024年1月1日以後の贈与から3年を段階的に7年へ延長)の贈与が遺産に加算されるのに対し、民法の遺産分割では相続人への婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与が期間の制限なく特別受益として考慮されうるなど、税と民法で別々のルールが適用されます。

【相続税では亡くなる前の贈与が加算される(2024年1月以後の贈与から7年へ段階的に延長)】

相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった方から加算対象期間内に暦年課税の贈与を受けていた場合、その贈与の価額を相続税の課税価格に加算します(相続税法19条1項)。加算対象期間は、亡くなった日によって次のように変わります(国税庁タックスアンサーNo.4161)。

亡くなった日 加算される贈与の期間
2026年12月31日まで 亡くなる前3年以内
2027年1月1日~2030年12月31日 2024年1月1日から亡くなった日まで
2031年1月1日以後 亡くなる前7年以内

7年がそのまま適用されるのは2031年1月1日以後に亡くなった場合からで、延長された期間(3年より前)の贈与は総額100万円まで加算しません。年110万円以下の贈与でも、期間内であれば加算されます。
なお、2024年1月からは、相続時精算課税を選んだ贈与にも年110万円の基礎控除が設けられています。
参考記事:相続時精算課税制度について

【加算された贈与の贈与税は差し引かれる(贈与税額控除)】

相続税に加算した贈与について贈与税を納めていた場合は、その贈与税の額を相続税から差し引くため、同じ財産に二重に課税されることはありません(相続税法19条1項)。

【遺産分割では特別受益として持ち戻しが問題になる】

遺産分割では、相続人が亡くなった方から婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与を「特別受益」として遺産に加え直し(持ち戻し)、各相続人の取り分を計算します(民法903条1項)。

民法903条1項(特別受益者の相続分)

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

「生前贈与が10年以上前でも遺産分割はできるか」とよく聞かれますが、遺産分割はでき、特別受益には贈与の時期の制限がないため古い贈与も主張されえます。ただし、古い贈与ほど証拠が残りにくく、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では原則として主張できません。
亡くなった方が持ち戻しを免除する意思を示していた場合は、持ち戻しをしません(民法903条3項)。
参考記事:生前贈与は「持ち戻し」になる?特別受益の計算方法

【遺留分の計算に入る贈与(相続人への贈与は原則10年以内)】

遺留分(一定の相続人に保障された最低限の取り分)を計算するときに加える贈与は、相続人以外への贈与は原則として相続開始前1年以内、相続人への贈与は相続開始前10年以内の婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与に限られます(民法1044条1項・3項)。
遺留分侵害額の請求は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内に行う必要があります(民法1048条)。

比べる点 相続税の生前贈与加算 遺産分割の特別受益 遺留分の計算
対象となる贈与 相続や遺贈で財産を取得した人が受けた暦年課税の贈与 相続人が受けた婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与 相続人への特別受益にあたる贈与と、相続人以外への贈与
期間 亡くなった日により3年〜7年 制限なし(相続開始から10年経過後の分割では原則主張できない) 相続人へは10年以内、相続人以外へは1年以内が原則
効果 課税価格に加算し、納めた贈与税を差し引く 遺産に持ち戻して各人の取り分を計算する 遺留分を計算する財産に加える

相続税の「7年」と、民法の特別受益・遺留分の「10年」は、目的も対象も異なる別のルールだということです。
生前贈与は他の相続人との公平や遺留分の問題を生むことがあるため、税の面だけでなく将来の争いの種にならないかも考えておきましょう。
参考記事:遺留分侵害額請求のやり方と期限|納得できない遺言への対抗策
参考記事:遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)について
参考記事:生命保険金は相続財産?遺産分割・遺留分の対象になるかと例外を弁護士が解説

■ 相続税が関わる遺産分割を弁護士に相談するメリット

相続税が関わる遺産分割を弁護士に相談するメリットは、税負担の見通しと相続人の間の公平の両方を踏まえて分け方を考え、話し合いがまとまらなければ代理人として交渉や調停まで任せられることです。

【税負担を見すえた分け方を、相手方との交渉で実現できる】

税負担が軽くなる分け方が分かっても、他の相続人が納得しなければ遺産分割は成立しないため、税の見通しを踏まえた分け方を相手方との交渉で実現できる点に、弁護士に相談する意味があります。
弁護士は、弁護士法3条2項により税理士の事務を行うこともできます。

弁護士法3条2項

弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

配偶者の取り分、自宅の取得者、代償金の額などを、税の負担と法律上の取り分の両面から検討し、代理人として相手方に提案できます。具体的な税額の計算や申告は税理士に確認しながら、分け方の交渉や相続人の間の調整は弁護士に任せる、という進め方も可能です。

【特別受益・遺留分の争いから調停まで一貫して任せられる】

生前贈与をめぐる特別受益の主張や遺留分侵害額の請求は、証拠の集め方と主張の組み立てで結論が変わりうる争いで、弁護士であれば協議から調停・審判・訴訟まで一貫して代理できます。
申告期限などを見ながら協議や調停の進め方を考えられることも利点です。

【遺言・民事信託など生前の段階から設計できる】

二次相続まで見すえた財産の引き継ぎ方は、相続が起きる前に遺言や民事信託(家族信託)で設計しておくことができます。
当事務所の代表弁護士は、東京弁護士会の信託法研究部や日弁連信託センターに所属し、民事信託と相続を扱ってきました。遺言や民事信託の契約書の作成から、遺産分割・遺留分の争いまでご相談いただけます。
参考:料金(相続に関する業務についての弁護士費用)
遺産の分け方の話し合いや調停は、当事務所にご相談ください。お電話(0120-061-057、平日9時~18時)またはメールフォームから受け付けています。

■ まとめ|相続税と遺産分割でお悩みであれば弁護士にご相談ください

相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、遺産の額がこれ以下なら原則として相続税はかからず、申告も要りません。
基礎控除を超える場合、配偶者の取り分は税額軽減だけでなく二次相続と配偶者の生活まで見て決めましょう。申告期限までに分割がまとまらなくても申告は必要で、「申告期限後3年以内の分割見込書」を出せば後から特例を使えます。生前贈与は、相続税の加算と民法の特別受益・遺留分とでルールが違います。
相続税が関わる遺産分割についてお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。弁護士への初回相談は無料です(最初の30分まで。以後30分ごとに追加費用がかかります)。相続税の申告期限が近い方も、お早めにお電話(0120-061-057、平日9時~18時)またはメールフォームからご連絡ください。

この記事を書いた弁護士

野俣智裕
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

  • 野俣 智裕

  • ■東京弁護士会 ■日弁連信託センター
    ■東京弁護士会業務改革委員会信託PT
    ■東京弁護士会信託法部

  • 信託契約書の作成、遺産分割請求事件等の相続関連事件を数多く取り扱うとともに、顧問弁護士として複数の金融機関に持ち込まれる契約書等のチェック業務にも従事しております。

  • 東京弁護士会や東京税理士会等で専門士業向けに信託に関する講演の講師を務めた経験も有し、信託や相続に関する事件に深く精通しております。

  • 所属弁護士・事務所詳細はこちら

  • 電話相談・オンライン相談・来所相談 弁護士への初回相談は無料※

    相続・信託に特化したサービスで、相続・信託に関するお悩み問題を解決いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
    ※最初の30分まで無料。以後30分ごとに追加費用がかかります。
    ※電話受付時間外のお問合せは、メールフォームからお問合せください。
    お電話受付:平日9時~18時
    0120-061-057