子なし夫婦の相続はどうなる?注意点や対策を弁護士が解説

相続

「子なし夫婦の相続はどうなるのか」とお悩みでしょうか?
「他に相続人がいないから問題は生じない」とお考えの方もいらっしゃるでしょう。
子どもがいない夫婦のどちらかが亡くなると、もう一方は必ず相続人となります。
しかし、配偶者以外にも、
●両親
●兄弟姉妹
●甥・姪
●前妻・前夫との子
などが相続人になる可能性があります。
関係性の薄い相続人が加わった結果、トラブルが生じるケースも珍しくありません。思わぬトラブルを防ぐには、生前の相続対策が不可欠です。
この記事では、
●子なし夫婦の相続人の範囲
●子なし夫婦の相続における注意点
●子なし夫婦の相続対策
などについて解説しています。
子どもがいらっしゃらないご夫婦が相続に関して知っておくべき内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

子なし夫婦でも配偶者以外が相続人になる!


「子なしだから相続人は妻(夫)だけだ」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際には、配偶者以外にも両親、兄弟姉妹、甥姪などが相続人になるケースは多いです。
まずは、法定相続人の範囲など、夫婦の相続に関する基礎知識を解説します。

法定相続人の範囲

法定相続人とは「故人の財産を相続する権利を持つ」と法律で定められている人です。
法定相続人の範囲に関するルールは、民法で以下の通り定められています。

●配偶者は必ず相続人になる。
●次のうち、最も順位が上の人も相続人になる。
第1順位:子
第2順位:直系尊属
第3順位:兄弟姉妹
配偶者は必ず相続人になる

配偶者(夫や妻)は、いかなる場合でも必ず相続人になります(民法890条)。
ただし、法律上婚姻した配偶者に限られ、内縁の配偶者に相続権は認められていません。

内縁の配偶者が財産を引き継げるケースについては、以下の記事を参照してください。
内縁の妻・夫は相続できない?財産を引き継ぐ方法を解説

配偶者以外の相続人


配偶者の他に相続人となる権利を持つのは、第一に子です(民法887条1項)。

子なし夫婦の場合には、次順位の直系尊属が相続権を持ちます(民法889条1項1号)。
直系尊属とは、直通する系統の上の世代の親族をいいます。具体的には、両親や祖父母、曾祖父母などです。直系尊属の中では、親等が近い両親がまず相続権を有します(民法889条1項1号ただし書)。両親が亡くなっているときは、祖父母が存命であれば相続人になります。

直系尊属がすでに全員亡くなっているときの法定相続人は、兄弟姉妹です(民法889条1項2号)。詳しくは後述しますが、兄弟姉妹が亡くなっているときは、甥や姪に相続権が移ります。
甥や姪もいなければ、配偶者だけが相続人となります。

したがって、配偶者が亡くなったとき、法定相続人のパターンは以下の4通りです。
●配偶者と子
●配偶者と直系尊属(両親など)
●配偶者と兄弟姉妹(あるいは甥姪)
●配偶者のみ
なお、上記はあくまで相続人に関する法律上のルールであり、遺言書で相続する人を定めれば遺言書が優先されます。

法定相続分


故人の遺産を分ける際には、相続人ごとに法律上基本となる取り分が定められており「法定相続分」と呼ばれます。
法定相続分は、法定相続人のパターンに応じて以下の通りです。

 

法定相続人 法定相続分
配偶者のみ 配偶者:1
配偶者+子 配偶者:1/2 子:1/2
配偶者+直系尊属 配偶者:2/3 直系尊属:1/3
配偶者+兄弟姉妹 配偶者:3/4 兄弟姉妹:1/4

 

同順位の相続人の中では、均等に分けられます。
たとえば故人の両親がいずれも存命であったときには、1/3を半分ずつに分けるため、父1/6、母1/6となります。
法定相続分は法律上基本となる割合に過ぎず、遺言書で異なる定めをしたり、法定相続人同士の話し合いで異なる割合にしたりしても構いません。

【ケース別】誰が相続人になる?

上記のルールを踏まえて、子なし夫婦の一方が亡くなったときに誰が相続人になるかを、ケース別にご紹介します。

親が健在

親の両方または片方が健在のときには、配偶者だけでなく「直系尊属」である両親も相続人です。たとえば、夫が亡くなったときに夫の親が存命であれば、妻と夫の親が相続人になります。
法定相続分は、妻が2/3、親が1/3(父母両方がいれば1/6ずつ)です。
珍しいケースではありますが、両親がともに亡くなっていても、祖父母のいずれかが存命であれば相続人となります。

兄弟姉妹が存命

両親(直系尊属)が既に亡くなっていても、兄弟姉妹が存命のケースは多いでしょう。このときは、配偶者と兄弟姉妹が相続人です。夫が亡くなったときであれば、妻と夫の兄弟姉妹が相続人となります。
法定相続分は、妻が3/4、兄弟姉妹が1/4(複数いれば人数に応じて均等に分配)です。

甥・姪がいる


兄弟姉妹が全員亡くなっていたとしても、兄弟姉妹に子どもがいるケースがよくあります。このケースでは兄弟姉妹の子、すなわち甥や姪が「代襲相続」して相続人になります。
代襲相続とは、相続人になるはずの人が既に死亡していて相続できないときに、代わりに子が相続権を引き継ぐ制度です(民法887条)。たとえば、夫の兄が先に死亡していても、兄に子がいれば、夫の死亡時には妻と兄の子(甥・姪)が相続人となります。
甥や姪には兄弟姉妹の権利が引き継がれるため、法定相続分は妻が3/4、甥・姪が1/4(複数いれば人数に応じて均等に分配)です。
兄弟姉妹の代襲相続は一代限りであるため、甥や姪が亡くなっているときには「甥・姪の子」は相続人になりません。

前妻・前夫との子がいる

注意してほしいのが、夫婦間に子がいなくても、前妻・前夫との間に子がいるケースです。結婚していなくても、他の人との間に子がいるケースであれば含まれます。
前妻や前夫は相続人になりませんが、生まれた子は相続人です。両親や兄弟姉妹が存命であったとしても、子が優先的に相続権を得ます。
法定相続分は、妻が1/2、子が1/2(複数いれば人数に応じて均等に分配)です。
夫や妻に子がいることを知らずに、死後に明らかになるケースもあります。

配偶者以外に身寄りがない

子どもがおらず、両親(直系尊属)、兄弟姉妹、甥姪もすべていないケースでは、配偶者だけが相続人です。唯一の相続人である配偶者がすべての遺産を得ます。
もっとも、「隠し子がいた」「生き別れた兄弟がいた」といったケースもあります。戸籍を調べて、配偶者が唯一の相続人であることを確かめなければなりません。

子なし夫婦の相続における注意点


子なし夫婦の一方が亡くなって配偶者の他に相続人がいるときには、トラブルが発生するおそれがあります。注意すべき典型的なトラブルをご紹介します。

他の相続人と話し合いができない

配偶者と他の相続人との間で意思疎通がうまくできなかったり、遺産の分け方について争いになってしまったりするケースは少なくありません。特に、甥姪など関係が遠い相続人は日頃付き合いがない場合も多く、問題が生じやすいです。
遺産の分け方を決める遺産分割協議では、相続人全員の合意をとりつける必要があります。相続人である以上、疎遠であったとしても除外できません。
相続人同士の話し合いがうまくいかないと、裁判所での調停などにもつれる可能性もあります。

不動産の分け方が決まらない

話し合いの際に問題になりやすいのが、不動産の扱いです。土地や建物は分けるのが難しく、思い入れが強いケースも多いため、トラブルになりやすいといえます。
預貯金など他の遺産が十分にあれば金銭面の調整がしやすいですが、遺産のほとんどが不動産の場合には難しいです。配偶者が不動産を受け取る代わりに代償金を支払う方法もありますが、手元に資金がないケースもあるでしょう。
分けるのが難しくひとまず共有にする方もいますが、問題が先送りになるだけであり、おすすめはできません。
不動産があるときには、分け方をめぐってトラブルが生じやすいため注意が必要です。

不動産の分け方について詳しくは、以下の記事を参照してください。
不動産を相続するには?手続きの流れや分割方法を弁護士が解説

認知症の相続人がいる

子なし夫婦の一方が亡くなった場合、両親や兄弟が相続人になりやすいです。同世代以上だと高齢者が多くなり、認知症の相続人がいるケースが少なくないでしょう。
認知症で法的な判断能力がない相続人がいると、相続手続きを進めるためには基本的に成年後見人をつけなければなりません。成年後見人の選任には時間や手間がかかり、相続が面倒になってしまいます。
関係が疎遠だと認知症になっている事実すら知らないケースもあり、思いがけないリスク要因といえます。

成年後見人が必要な相続手続きに関しては、以下の記事を参照してください。
成年後見人が含まれる相続手続きの流れ|必要なケースや注意点を解説

子なし夫婦の相続対策


相続トラブルを避けるためには、事前の対策が有効です。子なし夫婦の相続対策としては以下が考えられます。

遺言書

まず、遺言書の活用は有効な方法です。遺言書に定めれば、自由に遺産の分け方を決められます。「全財産を妻(夫)に相続させる」といった内容も可能です。
遺言書は自分だけで作成して自宅に保管することもできますが、形式面に不備があって無効になるリスクもあります。公正証書遺言や、自筆証書遺言の保管制度を利用するとよいでしょう。

遺言書を作成する際には、遺留分への配慮を忘れてはなりません。兄弟姉妹(甥・姪含む)以外の相続人には遺留分が認められており、最低限の割合の遺産を受け取る権利があります。
たとえば、両親が存命なのに「全財産を妻に相続させる」旨の遺言を残すと、夫の死後に両親から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。前妻・前夫との子や両親が相続人になるときには注意しましょう。

遺留分について詳しくは、以下の記事を参照してください。
遺留分の計算方法|具体例や請求方法もわかりやすく解説

民事信託(家族信託)

遺言による対策は有効ですが、遺言では自分の死亡時の相続についてしか定められません。「自宅は妻に。妻の死後は弟に」と考えていても、妻が亡くなった後は、妻の法定相続人(両親や兄弟など)が相続権を得てしまいます。
そこで、民事信託(家族信託)の利用が考えられます。民事信託とは、財産を引き継ぐために、信頼できる家族に財産の管理・処分を任せる制度です。
民事信託においては先々の財産承継についても定められるため、「自宅は妻に。妻の死後は弟に」という希望も実現できます。
ただし民事信託は仕組みが複雑であり、ご自身で設定するのは事実上困難です。民事信託に精通した弁護士へと依頼するようにしましょう。

民事信託について詳しくは、以下の記事を参照してください。
民事信託とは?活用方法やメリット・デメリットを弁護士が解説

生前贈与


事前対策としては、生前贈与も考えられます。
結婚して20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与したときには、持ち戻し免除の意思表示がなされたと推定されるため、特別受益として扱われません(民法903条4項)。したがって、他の遺産からの配偶者の取り分を減らさずにすみます。
またこのケースでは、贈与税の計算において2000万円まで控除対象になり、税制上のメリットも大きいです(相続税法21条の6)。
居住用不動産以外の贈与についても、年間110万円までは非課税となります。生前贈与は、トラブル防止だけでなく、税金対策としても有効な手段です。

特別受益について詳しくは、以下の記事を参照してください。
特別受益が認められるケースは?計算方法や遺産分割の流れも解説

生命保険

配偶者を生命保険の受取人にしておく方法も有効です。
受け取った生命保険金は基本的に遺産分割の対象にならず、配偶者の固有財産となります。
したがって、
●生活資金
●不動産の代償金
●遺留分侵害額請求への備え
●相続税の納税資金
など、様々な用途への活用が可能です。
なお、相続税を計算する場面では生命保険金は課税対象になりますが、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。

相続における生命保険金の扱いについて詳しくは、以下の記事を参照してください。
生命保険金は相続財産に含まれる?受け取れる人や相続税について解説

子なし夫婦の相続は弁護士にご相談を


ここまで、子なし夫婦の相続について、相続人の範囲や注意点、事前対策について解説してきました。子なし夫婦の一方が亡くなった場合、配偶者のほかに両親、兄弟姉妹、甥姪などが相続人になる可能性があります。トラブルに備えるために、遺言書、民事信託、生前贈与、生命保険による対策が有効です。

相続についてお悩みの方は、弁護士法人ダーウィン法律事務所までご相談ください。当事務所は相続に注力しており、遺言書はもちろん、対応できない弁護士も多い民事信託に関しても豊富な経験を有しています。状況やご希望をお伺いしたうえで、最適な対策をオーダーメイドで提案いたします。
「夫婦のどちらかが亡くなったときの相続が心配」という方は、お気軽に弁護士法人ダーウィン法律事務所までお問い合わせください。

この記事を書いた弁護士

野俣智裕
  • 弁護士法人 ダーウィン法律事務所 代表弁護士

  • 野俣 智裕

  • ■東京弁護士会 ■日弁連信託センター
    ■東京弁護士会業務改革委員会信託PT
    ■東京弁護士会信託法部

  • 信託契約書の作成、遺産分割請求事件等の相続関連事件を数多く取り扱うとともに、顧問弁護士として複数の金融機関に持ち込まれる契約書等のチェック業務にも従事しております。

  • 東京弁護士会や東京税理士会等で専門士業向けに信託に関する講演の講師を務めた経験も有し、信託や相続に関する事件に深く精通しております。

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